希望や願望がその時代の習慣に抑制されない人はこれまでもいたし、これからもずっといるでしょう。受け入れられている規範は、超えなくてはいけない課題であって、限界ではないという人たちです。
私たちはこういった人々を、「自由思想家」 、世界を変えるパワーを持つ夢想家そしてミューズと呼びます。そして大半の場合、彼らは実際に世界を変えるのです。
第１章
スピリット・オブ・エクスタシー
夢追い人の出会い
20世紀が明けると、ロンドンのピカデリーに本拠地を置く王立自動車クラブから、自動車愛好家たちが急速に台頭しました。
中でも飛び抜けていたのは、貴族のエンターテイナー、チャールズ・ロールズと叩き上げの天才エンジニア、ヘンリー・ロイスでした。また、王立自動車クラブの最初の秘書、クロード・ジョンソン、自動車ジャーナリズムのパイオニア、ジョン・ダグラス-スコット-モンタギュー。
そして、ボヘミアンのアーティストで彫刻家のチャールズ・ロビンソン・サイクスです。この型破りなグループとの交際が、以来ずっと世界に認めらている完璧さの象徴 「スピリット・オブ・エクスタシー」の創造へ導きました。
体験を渇望する彼ら一団に比べると、ロンドンのエリートたちが臆病に見えました。そしてその求心的な核が、エレノアでした。
ミューズが先導します
ヴィクトリア朝時代に生まれながらも、どんな時代であったとしてもエレノア・ソーントンは、現代を体現したでしょう。
質素な生い立ちから、その知性とカリスマでエリート社会を上り詰めました。彼女は、称賛の陰に隠れてはいるけれども計りしれないほど影響力を持つ型破りなグループの中心的存在になりました。モータリングの未来を形作るのに一役買った人たちです。
友情の絆と共に、今プロフェッショナルとして結びついた彼らの人生は、彼女の声によって導かれたのでした。彼女はこのグループを車の旅の新開地の最前線に共に立たせ、駆り立てた、機知に富んだエネルギーでした。
限界を超える
古いメンバーズクラブと静かな読書室をレース場のどよめきとワークショップの仲間意識へと変え、この才能ある集団はリベラルな姿勢をスピードと競争の興奮で飾りました。彼らはミューズに導かれ、着実に自動車の技術を習得し、決して不可能と思われた距離を越え、ラグジュアリーな快適さの中にそれを包み込み、以来、すべての洗練されたスリルを求める人たちの見本となりました。それは、彼らが「恍惚」と定義する感情です。
アイコン誕生
1909年、エレノア・ソーントンの存在は、アーティスト、チャールズ・サイクスによって装飾用の小さな像に具現化されました。今日にいたるまで、個人の自由の追求と付和雷同からの解放を包み込むこの小さな像は、すべてのロールス・ロイスに付け加えられている特別な存在です。当時の社会的慣習に挑んだ彼女の姿は一躍アイコンとなりました。その時からスピリット・オブ・エクスタシーとして知られた彼女は、風に向かって前傾し、腕を伸ばし、まるで飛んでいるかのようにドレスがたなびいています。夢、エネルギー、優雅さ、美の象徴であるスピリット・オブ・エクスタシーは、唯一無二で進歩的な仲間たちが追い求めた高みを具現化しています。そしてスピリット・オブ・エクスタシーは、彼らのビジョン、彼らの時を超えた遺産が表すすべてに対する賛辞であり続けています。
未来を見つめて
今、彼女のオーラは、そのレガシーによって火が点いた想像力を持つすべて者の夢を自由に吹き込むことができます。チャールズ・ロールズの願望が、今も彼の名を冠したそれらの創造物に浸透する中、ロールス・ロイスの上で風をきる小像のひとつひとつが、エレノア自身の自由への憧れを表現しています。
ラグジュアリーがそれと同じ幻想を楽しむ機会を与えてくれるたびに、私たちはエレノアの精神と一緒になるのです。あの時そうだったように、彼女は今、時代を率いています。各新世代のために時を超えて、大胆な者たちを導く光。世界を変えようとする者たちにとって、彼女は航路を決めるための星です。
私たちのミューズ。
大胆なスピリット・オブ・エクスタシー。
